1998年東京都生まれ。2025年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程先端芸術表現領域 修了。博士(美術)。筑波大学芸術系助教。株式会社あずま工房代表取締役。卓越した金属加工の技術を持ち、溶接、フライス加工、旋盤加工を中心に、自転車などのジャンクと金属を組み合わせて、主に動く立体作品を制作している。
MESSAGE
「武蔵野ART HIKE」は、身体的な体験を通してアートと出会う、新しい形の芸術祭です。舞台となる所沢は、都心からのアクセスも良い場所にありながら、一歩足を踏み入れれば、文学や映画にも描かれてきた武蔵野の豊かな自然が今なお息づいています。
自らの足で大地を踏みしめ、自転車で風を切って進む道のり。そのプロセスそのものが、ひとつの芸術的体験であると私は考えています。全国から集まったアーティストたちは、この土地の自然や歴史からインスピレーションを受け、独創的な作品を制作してくれました。彼らの作品は、皆さんの旅の道標となり、風景との対話を促し、土地に眠る記憶を呼び覚ましてくれるはずです。
ルートの途中、ふと足を止めてみてください。木々のざわめき、土の匂い、移りゆく光のグラデーション。日常では見過ごしてしまうような無数の発見が、皆さんを待っています。
昨年、所沢に設置した《バイクベンチ》も、武蔵野の豊かな自然にインスピレーションを得て制作しました。自然の中で静かにペダルを漕いで体験できます。
この秋、あなた自身のペースで巡る「アートの旅」へ出かけてみませんか。便利さから少しだけ離れた場所で、身体を通して武蔵野の魅力を再発見する、そんな特別な時間となることを願っています。
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設置場所
ところざわサクラタウン
(タリーズコーヒー横)
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作品名
他転車
CONCEPT
《他転車》は、自転車そのものが物理的に一回転する装置である。自転車の呼び名を遡ると、かつては“自在車”“自輪車”などと呼ばれていた時期があり、「自転車」という語はのちに広く定着した。私はこの“自転”という二字に、どうしても居心地の悪さを覚えてきた。
この違和感から、私は自転車を“自転”させてみようと考えた。
ところが、そこで立ち現れたのは皮肉でもある。完成した装置は、自らの力で転がる“自転車”ではなく、外部の力を受けて転がる“他転車”だったのだ。